1. HOME
  2. セレクション
  3. 水を考えるつどい(2018/8/1開催)

平成30年度「水を考えるつどい」が開催されました

毎年恒例となっている「水を考えるつどい」が今年も水の日(=8月1日)に開催されました(会場:イイノホール 東京都千代田区内幸町)。この式典は、昭和52年に制定され今年で第42回となる「水の日・水の週間」の記念行事として行われ、水資源の貴重さや健全な水循環について多くの人々がともに考える機会となっています。
以下に開催の様子を紹介します。



開催趣旨(主催者挨拶)

 式典のはじめには、平成30年7月豪雨で亡くなられた方への黙祷が捧げられました。
 石井啓一水循環政策担当大臣が主催者代表挨拶で、被災者された方々の生活の再建と、被災地の復旧・復興に向けて、全力で取り組んでいくとともに、いのちの源でもあり、多くの「恵み」をもたらしてくれる水が、洪水や渇水などの「災い」にもつながってしまう現状に対して、災いを減じつつ恵みを享受していくために、水循環全体の姿をとらえ、様々な問題に一体的に取り組むことで健全な水循環の維持・回復を目指していかなければならないことを述べました。続いて東京都知事(代理:中島高志東京都都市整備局理事)、虫明功臣水の週間実行委員会会長から主催者挨拶がありました。



未来へ伝えていかなればならない「水の歴史」

 続いて、「水について考える」をテーマとした全日本中学生水の作文コンクールの各受賞者に、各賞のプレゼンターから表彰状が手交され、約1万4000編の応募作品の中から、見事最優秀賞(内閣総理大臣賞)に選ばれた井崎英里さん(宮城県仙台二華中学校)が、受賞作品の「時をこえて~未来へ~」を朗読しました。
 同作は、新聞記事をきっかけに仙台市の水源域にある釜房ダムを訪ねたこと、そこに広がる風景画のような世界を前にして、この地球が「水の惑星」と呼ばれる由縁を感じたこと、一方で、シンガポールで知った同国の水問題に衝撃を受け、水をもっと大切にしようと心掛けたこと、そして、東日本大震災で水に対する見解が確実に変わったことを振り返りながら、「残すべき水の歴史」を未来へ伝えていきたいとする内容でした。
 井崎さんは、釜房ダムを訪れて描いた風景画を示しながら朗読を行い(写真参照)、その絵のすばらしさも相まって、参加者の感動を呼びました。
受賞者・作文内容はこちら(外部サイト:国土交通省)>



基調講演:原田啓介日田市長

 休憩後、原田啓介大分県日田市長による基調講演が行われました。「流域の暮らしを支える水の郷をもっと豊かに」と題された講演では、筑後川の上流に位置する水郷(すいきょう)日田の水文化、歴史、そして平成24年7月、平成29年7月の両九州北部豪雨を経験しての課題と取組が紹介されました。
 最初に、原田市長は、山から切り出した木を筑後川下流の大川に運んでいたこと、焼き物(小鹿田(おんた)焼、国の重要無形文化財)の皿を作る動力が水であること、市内を流れる小ヶ瀬井路の存在に触れながら、豊かな水ともにある日田の文化を紹介され、続いて、両九州北部豪雨の状況説明がありました。
 豪雨災害の中で最も大きな問題が、流木の問題であったこと、それが災害を非常に大きくしていること、その対策として、砂防等の必要性もさることながら、林地残材が残存する汚れた山をいかにきれいにするか、山の再生と保全が林業の再生とともに重要課題であることが説明されました。そのため、日田市では木質バイオマス発電施設整備を推進、支援してきたこと、市内の製材所から出るバーク(樹皮)を熱源とした木材乾燥を推進していることなど取組事例が紹介され、山を守り、製材をして人が働き、治山・治水をしながら暮らすことで地域の山をしっかりとつくっていきたいとの意気込みが語られました。
 そのためにも、筑後川を水源とする福岡都市圏の人々と協働して森林整備にあたっていること、河川整備の推進、筑後川流域を一つの地域と捉え上下流関連自治体が連携して開催する「筑後川フェスティバル」が今年度は日田市で開催されること、次世代を担う子供たちが河川環境について発表しあう「三隈川サミット」を開催していることなど、山林や河川への取組に加え、市民への啓発や教育が重要であることが述べられました。
 最後に原田市長は、人々の生活を豊かにもしてくれるが人の命も取っていく「水」とどう関わっていくのか、それは今後も大きな課題であるという認識を示し、木が製品になるまで30年、40年とかかる林業を考えても、30年後、40年後に誰が木を植えるのか? これまで起こったことをしっかり語り継ぎながら、子供たちの成長とともに未来へ引き継いでいく、そのような地域づくりを考えて今後も取組を進めていきたいと締めくくられました。



パネルディスカッション:流域は運命共同体

 基調講演の後、「流れの上流でも下流でも幸せになる流域の再生~上下流で水を考える~」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。まず、コーディネーターの青山佳世氏から趣旨説明があり、佐藤克英氏(内閣官房水循環政策本部事務局長)から、健全な水循環を確保していく上での課題認識が示された後、大まかには、水害発生時のような「非常時」と、「平常時」を想定して、上流域(水源域)の保全や振興がいかに図られ、下流域の安全が守られるか、官産学それぞれの立場からパネリストが取組事例を紹介し、議論を進めていきました。
 事例としては、横浜市と源流の道志村との災害時の協力協定や平時の交流・地域振興(温井氏)、東京都世田谷区と川場村の交流、荒川における流域連携による防災対策(宮林氏)、企業の水源森保全の取組(山田氏)について主に紹介があり、流域の上流域(水源域)の危機は、下流の危機であることがパネリストの共通認識としてありました。
 原田市長の基調講演にもあったように、山林が荒れることで、豪雨時に流木によって被害が拡大したり、そもそも山林から河川への流出量が増え、下流側の水害リスクが高まることが論点にあり、山林の再生や保全が重要な課題であること、そのためには、上流域に人が定着し地域の振興が図られ、水だけでなく経済が循環していくことが必要であり、横浜市と道志村、世田谷区と川場村はそれらに日ごろから取組み、成果を上げていることが示されました。
 そういった取組を進めていく中では、鹿の食害への対策が必要であること、時間が経過しても崩壊林道整備が必要であること、さらには、下流側の人々が上流域(水源域)の問題を「自分のこと」としてとらえることが重要であることなどがポイントとして挙げられました。
 自分のこととしてとらえ、理解し、行動していく上では、啓発や教育の取組の重要性であり、教育については、子供たちの河川、地域学習成果の発表の場である「三隈川サミット」(原田氏)の事例や、「森の宝箱」の映像(森の働きを示す実験装置:温井氏)、生活に密着した学びを河川教育で推進する取組(金沢氏)など具体例が紹介されました。
 まとめには、各パネリストからフリップで、「パートナーシップ」(温井氏)、「流域参加による元気な森づくり」(宮林氏)、「鹿」(山田氏)、「遊ぶ」(原田氏)、「考える子供・科学的に考える」(金沢氏)といったキーワードが提示され、佐藤氏が、「流域は運命共同体」という言葉とともに、取組を進めていく上では、その意識と持続可能性が鍵となるという認識を示し、議論を総括しました。


(パネリスト) ※五十音順
青山佳世氏(フリーアナウンサー、フォレスト・サポーター) ※コーディネーター
金沢緑氏(関西福祉大学教育学部学部長)
佐藤克英氏(内閣官房水循環政策本部事務局長)
温井浩徳氏(横浜市水道局水源林管理所長)
原田啓介氏(大分県日田市長)
宮林茂幸氏(東京農業大学地域環境科学部地域創成科学科教授)
山田健氏(サントリー株式会社サステナビリティ推進部チーフスペシャリスト)


セレクションに戻る