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水の世界

雨雲当番ポタン

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はじめに(2)

光がおさまると、辺りの様子はすっかり変わっていました。
まるで水の中にいるように、アサガオや学校や遠くの景色が、ゆれて見えるのです。
「ここは水の世界だよ。ボクのまほうで、キミたちをつれてきたんだ。」

ふたりが声におどろいてふり向くと、しずくのような形をした、ふしぎな生き物が立っています。
「ボクは雨雲当番のポタン。じつは、いますごくこまっているんだ。」
顔を見合わせる結衣と陽太に、ポタンはこれまでのできごとを話しました。

ポタンは、雲の神様からにんめいされた雨雲当番。
水の仲間たちから「雲のかけら」を集めて、雨雲をつくることが役目です。
ところが空からおりてくるとちゅうで、仲間のもとへ案内してくれるはずだった水のようせいと、はぐれてしまったというのです。

「じゃあ、近ごろ雨がふらないのは、ポタンがまいごになったせい?」
陽太が聞くと、ポタンは悲しそうにうなずき、「ボク、初めて雨雲当番になったから、どうすればいいかわからないんだ。」と泣き出してしまいました。

「雨がふらないと、ぼくたちもこまるんだ。ポタン、元気を出して。」
「わたしたちもお手伝いするから、水の仲間をさがして、雲のかけらを集めましょう。」
ふたりのはげましにポタンも勇気がわいたのか、「雨雲当番は、この雲とりぼうで雲のかけらを集めるんだ。」と、手に持ったぼうをくるくると回して言いました。

地球上の水は、海や陸から蒸発して雲となり、雨や雪なって再び地上に降りて川となり、一部は地下水となってやがて海へ戻っていきます。

流域ごとに水の循環を見ると、上流の森林は水源を涵養し、また、上流に降った雨は、上流、中流、下流で水道用水や農業用水などとして何回も循環利用されながら、海にたどり着きます。このため、水利用を通じて流域は相互に密接に関係しています。水は上手に使えば繰り返し利用できるという特性があります。
また、降水が梅雨期、台風期、降雪期に集中するなど、気象に大きく左右されるほか、地形が急峻で短い河川が多いため、降った雨のかなりの部分が短時間のうちに海へ流出してしまうなど、水資源を利用するには不利な条件にあります。
我が国では、このような条件のもとで、水資源を確保するためにさまざまな努力を重ね、豊かなくらしの礎を築いてきました。