雨雲当番ポタン
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エピローグ(2)
結衣と陽太が目を開けると、そこは学校でした。
結衣の手には観察日記があり、陽太はじょうろを持っています。
ふたりでアサガオの世話をしていた、あのときにもどってきたのです。
ただひとつちがうのは、空に大きな雲がうかび、太陽の光をさえぎっていることです。
「きっとポタンがつくった雨雲だよ。」と陽太は笑顔で空を見上げました。
ふたりが見ているうちに雨雲は辺りをおおうほどに広がり、やがて雨がふり始めました。
それから結衣と陽太は、教室のまどぎわで雨やどりをしました。ひさしぶりの雨にぬれて、
アサガオの葉も花だんの花も、校庭の木々の葉も、いつもより色あざやかに見えます。
ふたりは同じことを思っていました。
この雨が川や海をめぐって、ふたたび雲へと帰っていく長い旅のこと。
水のめぐみが、さまざまな場所で利用されていること。水を守るためにたくさんの人が関わっていること。
そして、ポタンと出会ったこと。
「そうだ。」と結衣は声を上げて、観察日記を取り出しました。
「書き直さなくちゃ。今日の天気は、晴れのち雨。」
それから結衣は、イラストのアサガオの葉の上に、大きな雨つぶをひとつ、かき加えました。